翻訳・通訳 仕事の種類と選び方 入門
翻訳・通訳の仕事の種類を知ることの重要性
翻訳・通訳の学習を始めようと考えている未経験の方にとって、「具体的にどのような仕事があるのか」「将来どのような分野で活躍できる可能性があるのか」を知ることは、学習のモチベーション維持や、より効果的な学習計画を立てる上で非常に重要です。漠然と学習を進めるのではなく、どのようなスキルが将来の仕事に繋がるのかを意識することで、日々の学習に具体的な目標を持つことができます。
この記事では、翻訳と通訳それぞれの主な仕事の種類や分野をご紹介し、未経験者が自身の興味や適性に合わせて方向性を考えるためのヒントを提供します。
翻訳の主な仕事の種類と分野
翻訳の仕事は、扱う分野や媒体によって多岐にわたります。代表的なものをいくつかご紹介します。
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実務翻訳:
- 企業のビジネス文書(契約書、マニュアル、報告書など)
- 技術文書(取扱説明書、特許関連文書など)
- 広報・マーケティング資料(プレスリリース、ウェブサイト、パンフレットなど)
- 法務・IR資料
- 求められるスキル:正確性、専門用語の知識(分野による)、論理的な文章構成力
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文芸翻訳:
- 小説、ノンフィクション、児童書など
- 求められるスキル:原著のニュアンスや文体を再現する表現力、創造性、読書量
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メディア・コンテンツ翻訳:
- 映像翻訳(映画、ドラマ、ドキュメンタリーなどの字幕、吹き替え)
- ウェブサイト翻訳
- ゲーム翻訳
- 漫画翻訳
- 求められるスキル:媒体の特性を理解した表現力(文字数制限、画面に合わせた自然さなど)、エンターテイメント性
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医学・薬学翻訳:
- 論文、治験関連文書、添付文書など
- 求められるスキル:高度な専門知識、正確性、最新情報の把握
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金融・経済翻訳:
- IR資料、決算報告書、経済ニュースなど
- 求められるスキル:専門知識、最新情報の把握、数字に対する正確性
翻訳の仕事は、原文の内容を正確に理解し、それをターゲット言語で自然かつ適切に表現する能力が求められます。特定の分野に特化することで、専門性を高めることが可能です。
通訳の主な仕事の種類と形式
通訳の仕事は、異なる言語を話す人々の間に入り、コミュニケーションを成立させることです。状況や形式によって、求められるスキルや難易度が異なります。
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同時通訳:
- 話し手の発言とほぼ同時に、通訳者が訳出を行います。国際会議などで使用される最も難易度の高い形式です。
- 求められるスキル:極めて高いリスニング力、瞬発力、集中力、豊富な語彙と知識
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逐次通訳:
- 話し手がある程度まとまった内容を話し終えるごとに、通訳者が訳出を行います。会議や商談、インタビューなどで広く用いられます。
- 求められるスキル:リスニング力、記憶力、ノートテーキング技術、構成力
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ウィスパリング通訳:
- 同時通訳の一種で、通訳者が聞き手の耳元でささやくように訳出を行います。少人数の会議や、多数参加の会議で特定の個人向けに行われます。
- 求められるスキル:同時通訳に準ずるスキル、周囲への配慮
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アテンド通訳:
- 要人に同行し、移動中や訪問先での会話を通訳します。観光案内やビジネス視察などにも伴います。
- 求められるスキル:幅広い対応力、基本的な通訳スキル、ビジネスマナー、地理や文化の知識
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医療通訳:
- 医療現場で、患者と医療従事者間のコミュニケーションを支援します。
- 求められるスキル:医療に関する専門知識、倫理観、守秘義務の厳守
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司法通訳:
- 裁判や捜査など、法的な場で通訳を行います。
- 求められるスキル:法律に関する専門知識、正確性、中立性、精神的な強さ
通訳の仕事は、その場で即座に判断し、適切な言葉を選ぶ瞬発力と、異なる文化背景を持つ人々のコミュニケーションを円滑に進める調整能力が重要になります。
自分に合った翻訳・通訳の仕事分野を選ぶヒント
未経験から学習を始める段階で、将来どの分野に進むかを完全に決める必要はありません。しかし、どのような仕事があるかを知っておくことは、学習の方向性を定める上で役立ちます。自分に合った分野を見つけるためのヒントをいくつかご紹介します。
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自身の興味・関心を掘り下げる:
- 現在、どのような分野やトピックに興味がありますか?(例:文学、科学技術、経済、エンターテイメントなど)
- これまでの経験で、得意だと感じることや、深く学びたいと思った分野はありますか?
- これらの興味や関心が、翻訳・通訳のどの分野と関連が深いかを調べてみましょう。好きな分野であれば、専門知識の習得も苦になりにくいものです。
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求められるスキルと自身の適性を比較する:
- 翻訳と通訳、それぞれに求められる主要なスキル(正確性、表現力、瞬発力、リスニング力など)をリストアップしてみましょう。
- 自己分析や、周囲の意見などを参考に、ご自身の得意なことや、チャレンジしたいスキルはどれか考えてみてください。
- 例えば、じっくりと時間をかけて文章と向き合うのが好きであれば翻訳、人前で話すことや即興での対応が得意であれば通訳に向いているかもしれません。
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情報収集を行う:
- 気になる分野の翻訳・通訳者が書いたブログや書籍を読んでみる。
- 関連する業界のニュースや専門誌に目を通してみる。
- 可能であれば、現役の翻訳者や通訳者の方の話を聞く機会を持つ(オンラインセミナーなども活用できます)。
- 特定の分野の仕事内容を具体的にイメージすることで、より現実的な目標設定が可能になります。
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まずは基礎から広く学ぶ:
- 学習を始めたばかりの頃は、特定の分野に絞りすぎず、翻訳・通訳の基礎スキル(語学力、リサーチ力、文化理解など)を総合的に高めることに注力することが推奨されます。
- 基礎を固める過程で、様々な種類の文章に触れたり、色々な通訳の事例を見聞きしたりすることで、自身の興味や得意なことがより明確になってくることがあります。
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トライアルや学習課題に挑戦する:
- 学習が進んだら、様々な分野の短い文章を実際に翻訳してみたり、簡単な通訳練習をしてみたりすることで、向き不向きを肌で感じることができます。
- 翻訳学校や通信講座の課題、オンラインで公開されている練習問題などを活用するのも良い方法です。
まとめ
翻訳・通訳には多様な仕事の種類があり、それぞれに異なる面白さや難しさがあります。未経験から学習を始めるにあたって、最初から一つの分野に絞る必要はありませんが、どのような選択肢があるかを知っておくことは、学習計画を立てる上での大切な一歩となります。
ご自身の興味や適性を考慮しつつ、まずは基礎力の強化に努め、様々な分野の情報に触れてみてください。学習を進める過程で、きっとあなたにとって最適な方向性が見えてくるはずです。この記事が、あなたの翻訳・通訳学習の道のりを歩み始める上での参考になれば幸いです。